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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
「……」
本を閉じ、ふと机の時計を見ると、午前零時過ぎ。
全七章構成のその物語を――この夜は二章まで読み進めるのが、私には精一杯だった。
とは言ってもそれは、時間的な制約によるものではない。私は一度夢中になれば、夜を通して読書に勤しむことも度々である。でもこの時は、それ以上は読めなかった。
その内容に興味が抱けない――と、その誤解を最も恐れるから、私は伝える。それを言うのなら、真逆だ。先生の小説に、私はその渦中へと引き込まれている。
ならば何故、その先を読まずにいられるのか。その訳はそこまで読み、そして得たこの一瞬の想い。私はそれをそのまま、眠りに就くまで胸に留めていたかった。
だから、読めなかったのではなく――私は読まなかった。
「少しだけ、意外……」
まだ眠くない身体をベッドに横たえると、私は冒頭の一章までを読んだ時の感想を口にした。
主人公は若くしてキャリアを積んだ、屈強なイメージの女性である。未だ続く男社会の中にあって、彼女は強い信念で立ちはだかる壁を打ち破ると、仕事に於いて成功を果たすに至っていた。
彼女は一定の充足感を得ながら、だが一方で何処か満ち足りぬものを感じている。そんな彼女の前に、仕事上で激しく対立する人物が現れ、そこから物語が動き始める。
当初どう転ぶのか解らなかったそのストーリは、そこから一気に恋愛という主題へと舵を切ってゆくのだった。