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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
それを北村先生が書いたのだと、それが念頭にあるから――意外。だけど言葉を返せば、それは私が先生の深層を知り得ていないから、なのであった。
でもそれ故、だからこそこの上もなく――私の心は、躍り始めている。
読むほどに先生に近づけるのだと、そんな気がして――いた。
物語は続く二章で、主人公の過去――高校時代へと遡ってゆく。ある日、彼女のクラスに編入して来た一人の男子生徒。彼こそ一章に於いて、彼女の敵対者として現れた人物であり。彼らが、クラスメイトであった事実が明かされている。
そして、二人は恋に堕ちるのだった。
彼女が彼に魅かれてゆく、その心理の描写。それを読んだことで、私は只ならぬ感情を抱く。だから、私はそれが綴られた二章までで、その先を読むのを一旦止めた。
その感情の正体を正しく噛み砕いていたのは、そのあくる日、北村先生の顔を見た時のこと。
只、言葉にできなくても、それでも――私は、既に気がついている。
「ああ……」
その夜、毛布の中には悶える様な――私の知らない私が、確かにいた。
だから――身体の芯より、湧き出る様な何かは、もう止めどないものだと知る、と。私は、締めつけられるような胸に、ギュッと右手を押し当てる。
その瞬間の熱さに戸惑い、でもそれを感じて――私は先生の顔を、夢想していた。
そこに生じた無形の妖しき何かを、私はそっとこの身に受け入れる。きっと昨日なら、汚れのように感じたそれは、けれど確かに私の内から生まれて――だから。
今は、何よりも――この想いこそが、純真なのだと――私は、決めたのだ。