この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
 その日の一限目の数学の授業を、私の耳はボンヤリとしてその内容を脳裏へ伝達しようとは、しない。

 『1+1=2』――恐らく、その約束事を覚えることから始まって、その後。切り立った崖の如く難解さを増してきたこの教科を、私は苦手としていた。

 だけど、それは単に毛嫌いを続けた結果に過ぎず、ちゃんと向き合えばどうにかなるのでは、と。ふと私は、些か呑気に考えてしまう。

 一つ一つの決め事を理解し、法則を身に着けそれを応用したなら、少なくとも高校で履修するレベルに於いて、その解答は明確に示される筈だ。

 不意にそんなことを考えてしまうのも、私の中に明確に表すことのできない『恋』という難解なものの存在を、認めてしまっているから……。


 例えば、入学した頃。私が初めて北村先生に抱いた好意に、『10』という数字を宛がった、として。

 その二年後。その間に少なからず訪れた場面にあって、『交わした言葉』『借りた本』等をそこに『足して』或いは『かけて』――そうした時に、最初の『10』という数字は一体、幾つになってしまうのだろう。

 それが『100』であり『1000』に達し、もっともっと気の遠くなるまでの数字で表すとしても、私にとってそれは腑に落ちるものではない。

 更にそれは今――『先生の小説』により、飛躍的に高まり、深まり、拡がりゆこうとしていた。それは最早、数字とした仮定を粉々なまでに無意味と帰す。

 だから、私は弾むように踊る心が、裏腹に――そこはかとなく、恐ろしい。

 もう秘め続けることは、たぶんできない。否、今はできても明日、そうできる保証はなかった。

 その正体を知った時には、既に御しきれぬ程までに、この瞬間も膨らみ続けているという――実感。

 どうにかしなければと思いながら、何をどうしたらいいのか――まるで、解らない。


「……」


 私はふと――視線を黒板より、窓の外へと移す。この日の天気は、はっきりとしない曇り空。

 私の心と同じ……。それを見つめ私は、とりあえず当面――。


 今夜も自分が、本の続きを読むのだろう、と――それだけは、解りきっていたのだった。
/579ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ