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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
 それを受けて、先生は――。

「そうか、やはり気恥しくもあるが……。それなら後学の為にも、藍山の感想を是非、伺わせてほしいな」

「そ、そんな……私の感想、なんて」

「もちろん、語る価値もないと言うのなら、無理強いはしない」

「そんなことっ、絶対! あ、ありません……ので」

「ハハ――じゃあ、頼む。しかし、流石に学校では落ち着かないな……。そうだ、藍山さえよければ――」

 そんなやり取りの後、先生はこの図書館で落ち合うよう提案してくれていた。


「……」

 予定の時間より随分早く着いた私は、本棚の間を歩き其処に香る空気を懐かしげに吸う。そうしながら特に本を手に取るでもなく進むと、そのまま学習室へ。

 中を見渡すと、やはり未だ先生の姿はなく。私は後列の空席を求めて、それに腰を下ろす。

 すると、その途端――私は急に息苦しさを覚えた。

「やだ……私」

 小声で呟く。

 何となく懐かしさに感けて、考えないようにしていた。だけど今、私の此処での待ち人は――北村先生なの、だ。

 その現実が本当に現実なのだとの意識が、訳も解らず何もかもが散らかし舞い上がろうとさせる――そんな気分。とにかく落ち着けと、その指令を何処に放てばいいのかさえ、皆目見当もつかない――そんな有様。

 私は深く呼吸をして、自分のすべきことを確認する。

 先生は私に――本の感想を聞く、只それだけの為に、此処に来る。

 でも、私は違って、る。それだけでは済まない、から。

 先ずその根底から違う互いの空気を、通わせ――交わらせる。それができなければ、きっと私は――何も言えない。


「でも、どうしたら……いいの?」


 苛む心細さを紛らわせようと、私は持参した鞄より、それを取り出す。

 『現』――数日前に読み終えた、先生の本。

 私は頁を捲ると、その終盤を読み返した。
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