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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
六章――。
過去では叶うことのなかった恋心。それ故に一層と激しく、互いを求め始める二人。だが大人となった二人には、その想いだけでは儘ならない事情が……。両家の確執の再燃、仕事上の対立の図式――等。周囲からの様々な軋轢が、次第に二人を苛んでゆく。
初見でそこまでを読んだ時。私は期せずして、手に汗を握っている。
主人公に感情移入を果たしたばかりではなく、私は自身の行動を小説の二人の末路に委ねている。彼らが逆境を乗り越え、それでも結ばれるのだとしたら。私だって何もしないまま、叶わぬと諦めることをしない――と、決めた。
だからこそ――再び引き裂かれようその展開に。『現』という含みを持たせたタイトルに。私は大いに、不安を感じた。
でも、七章では――。
彼女は全てをかなぐり捨てるように、彼の元へ。そして二人は互いだけを見つめ、共に歩むことを選んだ。
それは――それまでの葛藤を吹き飛ばす、素晴らしいラスト。少なくとも、私にとっては、そうだった。
でもそれは、私が只ならぬ自身の想いと共に、その物語を辿った結果。そう指摘されたとしても、それを否定することはできない。
既に客観的な視線を失うと、私は感じた。
私の恋を、先生が後押ししているの――だ、と。
深く一途に邁進する、それは私が内に育てた幻想。だけどこの時の私は未だ、そう自覚することができないで、いて。
「藍山――」
不意に名を呼ばれ――
「――!」
私は顔を上げ、視線を合わせる。
そして――私はその顔を愛おしく、じっと見据えた。
この刹那の邂逅を、小説の中の二人に重ねて……。