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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》

「そうか……」


 北村先生は、言う。

 その短い音の中に、私は――私の気持ちが組み込まれていったのだと、そう思っていたのだ。

 それは私の誤解かもしれない。或いはそれ以前に、正しくこの想いが咀嚼されている確証もない。

 だけど、先生は否定も肯定もなく、只――私の言葉を受け取ってくれたのだった。


 そこから、私はどう――したいの?


 此処に至って、ようやく私は、そう自問している。

 砕け散ってもいいのと、そんな覚悟が本当に私にあったのだろうか。解らない。今の私は、宙ぶらりん。でも、ふわふわとしたその感覚が、嫌いではなかった。

 告白を果たした実感だけが、トクントクンと身体の存在を示している。

 もっと言葉を尽くして、はっきりとした結果を求めようと、そう望まない訳でもない。今ならそれもできる、けれど……。


「もう、お前が卒業した頃になるだろう。この小説の続き――下巻が、出版される予定になっているんだ」


「――!?」


「その時が来たら、藍山に――また、読んでもらいたいものだな」


 優しく私を見つめながら、先生が示していたのは――物語の続き。


 だけど、それは本のことのみ――ならず。


「はい……必ず」


 ならば、今は未だ散るときではない。


 とにかく、私は――『生徒』である自分を『卒業』しよう。


 そしたら、もしかして……。


 それが私の中に生じた、最初で最期の――希望となった。
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