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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
「何故――どうしてっ!」
数年の自分を顧みても、およそ憶えのないその声が、室内に木霊してる。
この部屋は、進路指導室。生徒たちが自分の行く末を、話し合い考える、そんな場所だ。
今、其処で――途中をさ迷い続けた私が――私の気持ちが、頻りに――猛る。
楓姉さんの想いをなじられた気がして、私は怒りのまま――先生を睨んでいた。
「俺を憎むのも、無理はない。だが――」
「――!?」
未だ――感情を剥き出すことに、きっと私は慣れない――から。
飽くまで静に、見据えていた先生の眼差しが――私を戸惑わせて、る。
私と先生の間に、熱くも冷たくもない空気が漂い。微妙で危うさを孕むその中で、先生は言った。
「藍山楓は、生徒――教え子だった」
「……!」
「俺にとって、それは変わるものではなかった。だが、それは一方的な押しつけに過ぎなかったのだろう。あの日、藍山が何かを話そうとしたことを、俺はわかっていた。その上で先んじて、恋人の存在を明かすような真似を……。結局、俺が藍山楓の想いから、逃げてしまった――ということ」
「逃げ……て?」
「ああ……藍山の気持ちを正しく受け止め、それに真正面から応える。それすら、してやることはなかった。その後、訃報を耳にして……だが既に後悔した処で、何もかもが遅かったんだ」
くっ……!
涼しげに淡々と話す、何処までも大人のその態度が――私には気に入らなかった。
幾ら言い難いことを語ったとしても、私からすればそれだって言い訳に聴こえる。
理屈に全てを置き換えたのなら、先生には悪気はなかったと、そうなってしまい――
それだから、一層――卑怯だと、思った。
呼び覚まされた私の割り切れない感情が、目の前の大人を許したくはなかった――。
そんな私の内面を見透かすように、先生は再び私に、言うのである。
「藍山楓――その妹である、藍山栞」
「――!」
「頼むよ。俺の罪を――決めてくれないか」