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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
その日の放課後――。
「……」
去って行く大好きだった先生の後姿を、要二は校舎の窓より黙って眺めていた。
しかし、その心は穏やかではない。今すぐにでもそれを追い、言葉をかけたい衝動にかられている。
しかし――
「要二……いいの?」
友人からのその問いかけに、要二は無理やりの作り笑顔を構えた。
「は? 何がだよ。関係ねえだろ」
想いとは裏腹の言葉を吐くと、その胸の中の虚しさが透けて見えるよう。だが、今の彼はそれに耐えるくらいしか、できないのだと感じた。
それは、復学する少し前のこと。要二は自分と佐倉先生との間に流れる善からぬ噂のことを、既に聞き及んでいる。
表立ってその責任が問わた様子はなかった。しかし、先生の退職が急遽決まった裏には、それが何らかの影響を与えていないとは否定しきれない。否、もしかしたら、要二に迷惑をかけまいとして、彼女自身がそれを決めたことだってあり得るのではないか。
自分のせいで――と、そう思ってしまうから。要二は自身を情けないのだと、蔑む。
彼女に見合うように大人になろうとした最中で、そんな要二と立場を超え向き合ってくれた、先生。だが結果的に見れば、その責任を一心に背負うのも、大人である彼女だった。
それ故に、要二は別れ際にあっても、その前に立つことさえできないでいる。
消えようとするその背中に、せめて「ありがとう」と叫ぶことは吝かではなくとも。しかしそれも、酷く子供じみた自己満足に過ぎないのだと気づいて――。
「くっ、そぉ……」
要二は結局――ギリッと喰いしばった歯より、そんな音だけを漏らしていた。