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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
礼華は自らの語らなかった――語っても仕方のないと諦めた、その心情を吐露してゆく。
「お母さんに、似てる、私のこと……そんなに気に入らない、と言うのなら。何処かに、消えてあげても、いいわ。だけど……貴方は、それで……いい、の?」
「れ……礼華。俺は、別に……」
「私……わたし……は……ね」
やがて打ち震えゆく、身体。崩れ去りそうになるそれを、グッと堪え。
そうして、から――息を深く吸った、礼華は――
「望まない自分であり続けることなんてっ! もう――できないからっ!」
魂からの言葉の礫を、父に向けて吐き出していた。
渾身の叫びは、心身を酷く疲弊させていたから。その後の暫くを、礼華は呆然とした意識をさ迷わせていたようだった――。
ふと気がつくと、部屋は鎮まり。立ち尽くす自分は静かに――目の前のその光景を、見下ろしていたのだと認識している。
「ううっ、すまない……礼華……本当に、すまなかった。くっ……うお、うわぁぁあ……」
頭を畳に擦りつけ礼華に土下座する父は、そのまま長い間――嗚咽を漏らしていた。
「…………」
礼華は、只――それを見つめて。特に、何かを感じていた訳でも、ないのだろう。
一度は、堕落した父。そんな大人の男が、それで立ち直ると期待するほど、礼華の歩んできた道程は温くはなかったのだから……。
それは、別にどちらでも構わなかった。けれど、心を閉ざしてしまったのも、恐らくは自分の方であると、そう思うに至り。
せめて――高校を卒業する、それまでは――。
礼華は父に、もう一度だけ。父親である為の、そのチャンスを与えたのだ。
それは、許すとか許さないとか、既にその程度の次元の話ではなく。増してや同情の余地など、初めから微塵もなかった――が。
それでも今の礼華は、只――壊れたものを、そのままにしておくのは嫌なのだ、と。そう感じていたのは、確かだったのだろう。