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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
援助交際――その相手。礼華の決意が固いとみるや、男は既に臆面を隠そうとはしない。
「おっと、そんな意外そうな顔をするなよ。俺は可笑しなことは一言も言ってないぜ。よーく、考えてみろ。その身体で金を稼いできたことを、お前は否定しようというんだ。そんな汚れた金が、嫌なんだろ?」
それどころか、男は更に下衆に、礼華の弱みを抉ろうとしている。
「つまり、金を全て返せば――お前は、過去に遡り、綺麗な身体に戻れるって訳さ」
男の言い分は、何処までも下劣。社会に照らし合わせるまでもなく、厳罰に値するのは当然この大人の男なのである。なのに、それをすっかりと棚に上げると、男は礼華を苛む為だけに言葉を吐き出す。
「……」
もちろん、礼華にしても、男の卑怯さは理解している。それでも、礼華はその胸を頻りに痛めようとしていた。それは今の決意が固いからこそ……。
返せるものならば、返したい。それで全てが帳消しになる筈もないことは、誰よりも身を以て知ってはいる、けれど。やはり、こんな男の金銭に頼った自分は、許し難いと思えた。
だが、生活の中で消えた金を、今の彼女が用立てることは不可能である。
男はそれを十分に解りながら、更に礼華を甚振ろうとした。本気で金をせびろうというのではなくて、腹いせだけを目的としている。
「どうした? 金が無いのなら、またその辺の男にでも身体を売れよ。ハハハ、それじゃあ意味がないよなぁ。だけど結局――お前のような女は、そうして生きていくしかないんじゃないのか?」
「……!」
テーブルの下。膝の上に置かれた手を、礼華はギュウッと強く握った。内に募る儘ならぬ怒りは、爆発寸前。だがそれをしたのなら、もろ刃の剣の如く己までをも切り刻む結果となろう。
如何ともできず、今はじっと耐え続けるだけの――礼華。
「少しだけ――口を挟んでも、いいかな」
まるで、それに成り代わるようにして――
「どうも、耳触りがして――よくない」
その声は、礼華の背後より――届けられた。