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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
読んでいた新聞に隠れ、後ろに座るその客の顔を、礼華は見てはいない。だが、それを耳にした途端、礼華の心が俄かに騒ぎ始めた。
その独特の低い声には、確かに聞き覚えがある。しかし、まさか……そう、感じて。
「……」
先程までと別の緊張を滲ませると、静かな店内には歩み寄るツカツカとした足音が響いた。
「な、何だよ……アンタ――」
突如として現れた邪魔者に、男が警戒を顕わにした――その直後ことである。
――ガシャン!
「――!?」
椅子もろ共激しく倒れた男の姿に、礼華は驚く。しかし、本当に目を見張ったのは、男を殴りつけたその人物が、誰であるのかを確認した瞬間のこと。
濃紺のスーツ、後ろで束ねられた髪、浅黒い肌、眼差しを隠すサングラス――。
「これは、失礼――口を挟むと言いながら、先に手を出してしまったな」
ニヒルな笑みを携えた口で言い、倒れた男を見下ろすのは――
「白岩……さん……!?」
礼華は久しぶりに、その名を口にしていた。
白岩――父の借金を元として、礼華の人生を大きく揺るがした、男。
数年ぶりの邂逅。しかし、それに際した白岩の態度は、礼華のそれとは違っていた。
「さて――どうして、お嬢さんが俺の名を呼ぶのかは、不思議だが。それよりも――」
えっ……?
「――早く、店を出た方がいいな。じきに、騒ぎになるよ」
白岩は横顔を向けたまま、礼華を素知らぬ他人であるように、そう言った。
「白岩さん……私……」
もしかして、自分に気づかずに――と思い、言うが。
「俺の名を呼ぶな。早く行け」
白岩は迫力を滲ませた低音で、礼華を制した。
「け……警察。警察を――呼んでくれっ!」
殴られた男は、そう叫んだ。
背中で後ずさりしながら鼻血を流す男――その身体を右足で踏みつけ、白岩は言う。
「金にお困りでしたら、私がご相談に乗りましょう」
事の成り行きを見守っていた店主や他の客たちが、騒然とする――その最中で。
「こんな男にも、俺のような男にも――二度と関わらない。そう、決めたのだろう――高校生のお嬢さん」
白岩は、ようやく礼華に視線を向け。最後に何処か暖かな――そんな笑顔を残した。
その独特の低い声には、確かに聞き覚えがある。しかし、まさか……そう、感じて。
「……」
先程までと別の緊張を滲ませると、静かな店内には歩み寄るツカツカとした足音が響いた。
「な、何だよ……アンタ――」
突如として現れた邪魔者に、男が警戒を顕わにした――その直後ことである。
――ガシャン!
「――!?」
椅子もろ共激しく倒れた男の姿に、礼華は驚く。しかし、本当に目を見張ったのは、男を殴りつけたその人物が、誰であるのかを確認した瞬間のこと。
濃紺のスーツ、後ろで束ねられた髪、浅黒い肌、眼差しを隠すサングラス――。
「これは、失礼――口を挟むと言いながら、先に手を出してしまったな」
ニヒルな笑みを携えた口で言い、倒れた男を見下ろすのは――
「白岩……さん……!?」
礼華は久しぶりに、その名を口にしていた。
白岩――父の借金を元として、礼華の人生を大きく揺るがした、男。
数年ぶりの邂逅。しかし、それに際した白岩の態度は、礼華のそれとは違っていた。
「さて――どうして、お嬢さんが俺の名を呼ぶのかは、不思議だが。それよりも――」
えっ……?
「――早く、店を出た方がいいな。じきに、騒ぎになるよ」
白岩は横顔を向けたまま、礼華を素知らぬ他人であるように、そう言った。
「白岩さん……私……」
もしかして、自分に気づかずに――と思い、言うが。
「俺の名を呼ぶな。早く行け」
白岩は迫力を滲ませた低音で、礼華を制した。
「け……警察。警察を――呼んでくれっ!」
殴られた男は、そう叫んだ。
背中で後ずさりしながら鼻血を流す男――その身体を右足で踏みつけ、白岩は言う。
「金にお困りでしたら、私がご相談に乗りましょう」
事の成り行きを見守っていた店主や他の客たちが、騒然とする――その最中で。
「こんな男にも、俺のような男にも――二度と関わらない。そう、決めたのだろう――高校生のお嬢さん」
白岩は、ようやく礼華に視線を向け。最後に何処か暖かな――そんな笑顔を残した。