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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
午前十時。新幹線も乗り入れる、学校にほど近い駅舎。藍山栞と乾英太。其処は、二人の待ち合わせ場所――。
「……」
栞は、通学時と同じ。ローカル線で二駅を揺られ、そのホームに降り立つ。時刻を確認すると、午前九時四十四分であった。
北村先生と――否、姉である楓の過去と向き合おうとする、その前。栞が英太に委ねていたのは、この日一日の自分の在り方である。
それをデートと呼んでいいのかは、知らない。だが今、二人は待ち合わせ、この日を共に過ごすことは、既に決められていた。
その全ては、英太の書いた小説によって――。
だから、駅での待ち合わせも、二人が直接に交わした約束ではなく。飽くまで、小説を読んだ栞が、それに倣っているに過ぎない。
まだ、その時間には間がある。でも、彼は来ているのだろうと、それは直感。
ローカル線のホームからの狭い通路を抜け、駅舎の中央へと進みながら。着なれない薄手のワンピースが、ちょっとソワソワと動きにくいのだと感じている。
駅舎に併設されたプラザ内。その中は吹き抜けとなっていて、中央には大きなからくり時計があった。
それを斜めに望む、中二階で――
「――!」
栞は、其処に佇む英太の横顔を、見つけている。