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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
しかし、栞は其処に駆け寄るではなく、やや離れた場所からその姿を静かに見守っている。
【十時になり鐘の音を鳴らす、カラクリ時計。動き出す、妖精たちの人形。何気にそれを見つめていると、後ろから彼女が僕を呼ぶ小さな声が聴こえた】
そのタイミングを、栞は静かに待つ。離れているのに、英太の緊張が伝わる。そうしていると、自分の胸まで昂ってくる――みたいで。
――カチッ。
やがて、十時。普段は気に留めたことのない、からくり時計は時を告げながら始動してゆく。
そして――
「乾くん……」
「あ……うん」
声をかけ、振り向いた、その顔。
その後の会話を探しながら、栞と英太は小説の中の二人と同じようにして、出会った。
「じゃあ……行こう、か」
「うん……」
そっと、頷く。トクトクとした心音は、まだ心地よくもある。
けれど――並んで駅の出口へと向かう二人は、既に次の行為を意識していた。
【肩を並べ歩きながら、僕たちはどちらからともなく、手を繋いだ】