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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
「……」
「……」
十歩ほど歩を進めながら、ゆっくりと狭まりゆく――二人の距離。
「――!」
ツン――他人事みたいに触れた手の甲は、その合図だった。
きこちなく絡むことを求める右手を、受け入れるように。栞は掌を開き、それを導く。
その刹那――ぎゅ、と。
二人は力を込めて、互いの初々しさを――握り締めた。
ふっと、顔を向ける、と。視線を逸らした英太の右の頬が、紅い。
「……」
栞は黙ってその色を眺めながら、自分はどんな顔をしているのだろう、などと考えてしまう。
しかし、階段を降りた、処。駅前のロータリーに至ると、英太の手は突如として離れた。
「――?」
思わず見つめた、栞に――
「ごめん……やっぱ、よそう」
英太はそう言うと、真っ赤な顔を俯かせ、先を歩く。
「……」
栞は立ち止まると、握られていた左手を見た。掌にじわっと滲むものは、汗。栞はその微かな湿りに、英太の意図を見つけた。
と、すぐに背中を追い。そして、並びかけたままに、再度――徐に英太の手を掴み取る。
「えっ……」
驚いた英太に――
「気にしなくても、いいの。私だって、きっと。緊張してる、から……」
栞はそう言って、互いの指を深く絡ませ、今度はさっきよりも――硬く、それを結んだ。
二人は会話もなく、そのまま街中を進む。
繋がれた手は、互いの汗を混ぜて。しっとりと濡れゆく感覚は、確かに不快のようでもあるけれど……。
それでいて……とても、熱い。
と――栞は、そう感じていた。