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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ

【僕たちは何を求める訳でもなく街を歩き、やがて昼が訪れると簡単な食事をした】



 何処にでもある、ファーストフードの店内。

 店を決めかねていた英太に代わり、栞が手を引くようにして其処へ。二人は狭いテーブルで顔を突き合わせている。

 無造作にハンバーガーを頬張る、栞。すると、そんな自分を眺める英太の何処かきょとんとした視線に、ふと気がつく。

「私――何か、可笑しい?」

「ううん、そうじゃなくって。でも、なんか……少し、不思議なの、かな」

「不思議……?」

 小さく首を傾げる栞に――

「こうして、藍山さんと、一緒に食べてること。それが、不思議で……なんか、嬉しいんだ」

 英太はそう言って、照れたように微笑んだ、から。

「……」

 栞も何故か心を擽られたように、ほんの少しだけ、その顔を上気させた。



【味さえわからぬまま、食事を済ませた後。僕は彼女に、気になっていたことを訊ねる】



「北村先生から……お姉さんの話、聞けた?」

 そう訊かれ、栞が黙ってコクッと頷く、と。

「それで、どうだったの」

「……」

 静かに俯く栞を見て、英太は少し慌てていた。

「あ、いや……無理に話す必要なんて、ないから」

 それに対し、栞は髪を揺らし首を振る。

「違うの。私……変に思われてしまうかもって、それが心配で……」

「変……?」

「けれど、たぶん私……乾くんには、話したくて。だから……聞いてもらっても、いい?」

 恐る恐る上目使いに、その瞳を向けると――

「うん。もちろん」

 英太は即座に、そう応じた。


 北村先生から話を聞いたこと。その時まるで自分のことのように、姉の気持ちに触れたと感じたこと。

 栞は包み隠すことなく、その全てを英太へと語ってゆく。
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