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クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
繰り返しになるが、私はいつも教室で本を読んでいる。言わば本は、私の逃避場所。そう、私は物語の中に逃げ込んでいるのだった。
自分の人生という物語から、私は逃げ続けている。三年前から、ずっと……。
そんな私にとって、自分の気持ちと本気で向き合うことは皆無であり。時に感情が揺らめいたとしても、私はそれを無かったことにしようとする。
そうして自分を押し殺し、ここで過ごしていたからなのだろうか? 何時しか私は、他人の気持ちに対して敏感になっていったのだと思う。
「……」
目では活字を追いながら――私は常に、教室の気配を感じている。耳に届く会話の、声のトーン。皆から醸し出される、微妙な空気。ちょっとした足音にさえ、私は何かを察してしまうのだ。
そんな私であるから、きっと誰よりも、ここにいるクラスメイトたちの内面に気がついている。その全てが正しい認識だなんて、思ってなどいないが。それでも、単なる錯覚とも違い、私の中に於いてその感覚は確かなものであるように思えた。
西くんの好意に気がついたのも、そうであるし。そして、彼女が向けた複雑な想いを知ったのも、それに基づいたものだった。
「……」
私は本から視線を外し、教室の後方を見る。彼女も私に気がつき、ほんの数秒、私たちの視線が重なっていた。
「……」
赤緒礼華はいつでも、私に何かを言いたそうな顔だ。だけど彼女のそれは、私に明快な敵意を向ける山村さんの場合とはどこか異なっている。
周囲に比べ大人びた彼女は、それ故にきっと、わかっているのだろう。彼女が抱く感情を私にぶつけることが、問題の解決にならないということを……。
赤緒さんが望んでいることは、たぶん自分の幸せではなかった。それだから一層、私はそんな彼女に気兼ねしてしまう。
私が西くんの好意に戸惑いを覚えるのは、その様な理由からだった。
自分の人生という物語から、私は逃げ続けている。三年前から、ずっと……。
そんな私にとって、自分の気持ちと本気で向き合うことは皆無であり。時に感情が揺らめいたとしても、私はそれを無かったことにしようとする。
そうして自分を押し殺し、ここで過ごしていたからなのだろうか? 何時しか私は、他人の気持ちに対して敏感になっていったのだと思う。
「……」
目では活字を追いながら――私は常に、教室の気配を感じている。耳に届く会話の、声のトーン。皆から醸し出される、微妙な空気。ちょっとした足音にさえ、私は何かを察してしまうのだ。
そんな私であるから、きっと誰よりも、ここにいるクラスメイトたちの内面に気がついている。その全てが正しい認識だなんて、思ってなどいないが。それでも、単なる錯覚とも違い、私の中に於いてその感覚は確かなものであるように思えた。
西くんの好意に気がついたのも、そうであるし。そして、彼女が向けた複雑な想いを知ったのも、それに基づいたものだった。
「……」
私は本から視線を外し、教室の後方を見る。彼女も私に気がつき、ほんの数秒、私たちの視線が重なっていた。
「……」
赤緒礼華はいつでも、私に何かを言いたそうな顔だ。だけど彼女のそれは、私に明快な敵意を向ける山村さんの場合とはどこか異なっている。
周囲に比べ大人びた彼女は、それ故にきっと、わかっているのだろう。彼女が抱く感情を私にぶつけることが、問題の解決にならないということを……。
赤緒さんが望んでいることは、たぶん自分の幸せではなかった。それだから一層、私はそんな彼女に気兼ねしてしまう。
私が西くんの好意に戸惑いを覚えるのは、その様な理由からだった。