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クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
 具体的なことを言えないのは、申し訳なくも思う。でも私が知ってるそれらの気持ち、全て本人に確かめたものではないから……。

 特に赤緒さんの場合は、彼女個人に限った想いではないので、今は私の中に秘めておきたい。只、知らない振りをして、赤緒さんの感情を逆撫ですることは、やはりしたくはなかった。

 珍しく色々考えていたから、本を数頁読んだ処で昼休みは終わる。私はふっと小さく息をつき、読み止しの本に栞を戻した。


 この日、午後の最初の授業は歴史。チャイムが鳴ると教壇に立つのは、佐倉瑞穂先生。

 佐倉先生はまだ若く、この学校に赴任したばかり。経験も十分ではなく、明らかに環境にも慣れてもいない。生徒の私の目にも、そんなことが見て取れた。

 この城平高校に通う生徒たちは、あまり勉強に熱心とは言い難いのだろう。成績上位者を覗けば、二年のこの時期から大学受験を意識する人なんて皆無と言えた。

 そんな事情も手伝っているのだろうか。不慣れな佐倉先生の授業に、真面目に耳を傾けるクラスメイトはごく一部。

 堂々と机に突っ伏して、寝ている人。隣の席同士、ヒソヒソと話してる人。あとは携帯を弄ってたり、雑誌を読んでいたり、大体はそんな授業風景だった。

 佐倉先生も当然、それを自覚している。たまに注意を促そうとするけど、多くの場合はぐっと飲み込んでしまっていた。その姿を見ていると、私は先生の気持ちを察する。

 たぶん佐倉先生は――生徒に舐められる自分が不甲斐なく、自信を失っているようだった。

 だから注意を喚起することもできずにいて。満足に教えられないことに、ひたすらフラストレーションを蓄積している。

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