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クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
だけど、この日この瞬間――。佐倉先生は何らかの臨界に、達していたのかもしれない。
先生が板書していた時に、教室の後ろの方の席でクスクスとした笑い声が聴こえた。
すると――
「……」
板書していた手が、ピタリと止まり。そして徐に振り向くと、先生は険しい顔を見せる。
「今、笑ってたの――誰なの?」
その問いを向けられ、教室は鎮まった。だけど、そこに緊張感はない。生徒たちは何となくニヤつき、「誰だよ?」といった雰囲気で周囲をキョロキョロと見渡していた。
その様子を目にして、佐倉先生は深めのため息をつく。それから幾分その表情を和らげて、静かに語り始めた。
「先生が、まだ未熟なのことは認めます。だから皆に興味を抱かせるような教え方は、できていないのと思うの。だけどね――今は授業中です。皆さんにとって、とても貴重な時間だから、それを無駄にしてほしくないの」
それを聞いて私は、佐倉先生がとても真摯な人なのだと感じる。だけど同じように感じた人は、どうも少なかったみたいだ。
「あの、先生! 一つ、質問していいすか?」
「あ、はい。佐川くん、どうぞ」
「先生さ――彼氏っているの?」
「え……?」
明らかに想定を逸脱した質問を受け、戸惑いを隠せなかった佐倉先生――。
その姿をよそに、教室はドッと一気にざわめいている。
別にそれは、一人のちょっとした悪ふざけなのだろう。だけど、クラスという矮小な集団の中で、時にそれは無慈悲なものと変わる。
今――佐倉先生は、その最中に呑み込まれようとしていた。
先生が板書していた時に、教室の後ろの方の席でクスクスとした笑い声が聴こえた。
すると――
「……」
板書していた手が、ピタリと止まり。そして徐に振り向くと、先生は険しい顔を見せる。
「今、笑ってたの――誰なの?」
その問いを向けられ、教室は鎮まった。だけど、そこに緊張感はない。生徒たちは何となくニヤつき、「誰だよ?」といった雰囲気で周囲をキョロキョロと見渡していた。
その様子を目にして、佐倉先生は深めのため息をつく。それから幾分その表情を和らげて、静かに語り始めた。
「先生が、まだ未熟なのことは認めます。だから皆に興味を抱かせるような教え方は、できていないのと思うの。だけどね――今は授業中です。皆さんにとって、とても貴重な時間だから、それを無駄にしてほしくないの」
それを聞いて私は、佐倉先生がとても真摯な人なのだと感じる。だけど同じように感じた人は、どうも少なかったみたいだ。
「あの、先生! 一つ、質問していいすか?」
「あ、はい。佐川くん、どうぞ」
「先生さ――彼氏っているの?」
「え……?」
明らかに想定を逸脱した質問を受け、戸惑いを隠せなかった佐倉先生――。
その姿をよそに、教室はドッと一気にざわめいている。
別にそれは、一人のちょっとした悪ふざけなのだろう。だけど、クラスという矮小な集団の中で、時にそれは無慈悲なものと変わる。
今――佐倉先生は、その最中に呑み込まれようとしていた。