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クラス ×イト
第2章 だメンず 【乾英太1】
「好きな女――」

 僕は最初その質問に対して、ピンと来るものはなかった。だから――

「それって、アニメの話?」

 と、真面目な顔でそう訊き返しただけ。いつもの話の延長くらいに、受け取っていた。

 だけど要二からすれば、それは酷く的外れだったらしく。

「違うだろ……。俺が訊いてるのは、現実世界の女のことだよ」

「現実の……?」

 そう聞いてもやはりイマイチ響かず、僕は小首を傾げる。

 その様子を見て、要二は頭を抱えた。それからため息を吐くと、教えを説くように懇々と語り始めた。

「いいか――二次元は確かに偉大だ。現実の女が、アニメのキャラに適うわけがないからな。その点に於いて、俺も全くお前らに異論はない。だが哀しいことだが、俺たちは三次元に生きている。そこから目を背けて、アニメに逃げてばかりもいられないだろ。三生――お前、何故だかわかるか?」

 そう話しを振られ、三生はぼんやりと宙を見つめる。

「えっと……アニメの女の子とは、結婚できないから……かな?」

「半分正解。だが俺たちも年頃の男子だ。ここは敢えて踏み込んで、こう言うべきだろうな」

 要二はやや間を取り、そしてそれからこう言い放った。

「アニメとは――セックスができないからだ」

「せ……っくす?」

 三生はそう繰り返して、思わず顔を真っ赤にしている。

 そして、僕も――

「よ、要二……一体、何の話してるのさ」

 要二を窘めると、会話が聞かれていないか周囲を気にした。

 しかし、要二は気にする風もなく、更に話を進めようとしている。

「オドオドしてんじゃねーよ。大事なことだろ。例えば英太――」

「な、何?」

「このクラスで、お前が気になってる女子は誰だ?」

「え……?」

 期せずして、そう問われ。

 僕は自然と、教室の中を見渡した。
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