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クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
 教室に戻ろうとして、廊下を歩いている私は――。

 ドッ……ドッ……。

 俄かに高まりゆく、自らの心音に気がついていた。

 その原因は、たぶん、乾英太に会っているから……。


「……」

 そんな風に言ってしまえば、誤解されてしまうものだろうか。だけど別に、私は彼のことが好きな訳ではなかった。

 否、そう言ってしまうのも違うのかもしれない。きっと、それ以前の問題として。この私の中に『誰かを好き』なんて気持ちが生じるものか、それ自体が自分でも謎であった。

 けれども――乾くんに対して、私が一定以上の関心を抱いていることは事実。その理由は、また少し後で話すことになると思う。

 何となく呆然とそんなことを想い、階段を上がっていた時だった。


「藍山――」

 と、私に声をかけたのは、クラス担任の北村慶吾(きたむら けいご)先生。

「去河が怪我したって聞いたが、大丈夫なのか?」

 どうやら事情は既に、佐倉先生から聞いているのだろう。私は処置を済ませたことと、大した怪我ではなかったことを端的に告げる。

「そうか。藍山、ご苦労だったな」

 やや安心した表情を見せ、北村先生はそう言った。

 そのまま、立ち去ろうとしている先生を――

「あの――先生」

 私は、不意に呼び止めている。

「ん、どうした?」

「何故、去河くんが怪我をしたのか。先生は、聞いていますか?」


 この日の私は、つくづく余計なことを口にしてしまうみたいだ。
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