この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
教室に戻ろうとして、廊下を歩いている私は――。
ドッ……ドッ……。
俄かに高まりゆく、自らの心音に気がついていた。
その原因は、たぶん、乾英太に会っているから……。
「……」
そんな風に言ってしまえば、誤解されてしまうものだろうか。だけど別に、私は彼のことが好きな訳ではなかった。
否、そう言ってしまうのも違うのかもしれない。きっと、それ以前の問題として。この私の中に『誰かを好き』なんて気持ちが生じるものか、それ自体が自分でも謎であった。
けれども――乾くんに対して、私が一定以上の関心を抱いていることは事実。その理由は、また少し後で話すことになると思う。
何となく呆然とそんなことを想い、階段を上がっていた時だった。
「藍山――」
と、私に声をかけたのは、クラス担任の北村慶吾(きたむら けいご)先生。
「去河が怪我したって聞いたが、大丈夫なのか?」
どうやら事情は既に、佐倉先生から聞いているのだろう。私は処置を済ませたことと、大した怪我ではなかったことを端的に告げる。
「そうか。藍山、ご苦労だったな」
やや安心した表情を見せ、北村先生はそう言った。
そのまま、立ち去ろうとしている先生を――
「あの――先生」
私は、不意に呼び止めている。
「ん、どうした?」
「何故、去河くんが怪我をしたのか。先生は、聞いていますか?」
この日の私は、つくづく余計なことを口にしてしまうみたいだ。
ドッ……ドッ……。
俄かに高まりゆく、自らの心音に気がついていた。
その原因は、たぶん、乾英太に会っているから……。
「……」
そんな風に言ってしまえば、誤解されてしまうものだろうか。だけど別に、私は彼のことが好きな訳ではなかった。
否、そう言ってしまうのも違うのかもしれない。きっと、それ以前の問題として。この私の中に『誰かを好き』なんて気持ちが生じるものか、それ自体が自分でも謎であった。
けれども――乾くんに対して、私が一定以上の関心を抱いていることは事実。その理由は、また少し後で話すことになると思う。
何となく呆然とそんなことを想い、階段を上がっていた時だった。
「藍山――」
と、私に声をかけたのは、クラス担任の北村慶吾(きたむら けいご)先生。
「去河が怪我したって聞いたが、大丈夫なのか?」
どうやら事情は既に、佐倉先生から聞いているのだろう。私は処置を済ませたことと、大した怪我ではなかったことを端的に告げる。
「そうか。藍山、ご苦労だったな」
やや安心した表情を見せ、北村先生はそう言った。
そのまま、立ち去ろうとしている先生を――
「あの――先生」
私は、不意に呼び止めている。
「ん、どうした?」
「何故、去河くんが怪我をしたのか。先生は、聞いていますか?」
この日の私は、つくづく余計なことを口にしてしまうみたいだ。