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クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
「――!」
私のその問いを受けて、北村先生は表情を俄かに変える。
北村先生は、やや掴み処がない人だ。常に飄々と脱力していて、無暗に狼狽えたりはしない。厳格とは言い難くとも、年齢以上の余裕を以って生徒に接している。そんな先生は思いの外、クラスの皆にも慕われているようだった。
そうした北村先生であるからこそ、この時の微かな揺らぎには意味があるように思える。しかし、それも一瞬。先生は大人の顔を纏うと、苦笑いを浮かべこう話す。
「ああ、騒ぎになったみたいだな。それを去河が、注意してくれたんだろ。全く、仕方ない奴らだ。面倒だが、後で説教でもしてやるさ」
「……」
その騒ぎの一端に自分が関係してることを、先生は触れようとはしない。たぶん、それを知りながら敢えてそうしていた。
最もわざわざ私などに向かって、それを言う必要もないということなのだろう。だからその点に於いて、無関係な私が先生を追求する理由はなかった。
それでも私は、去河くんの気持ちを知り。噂の真偽はともかくとしても、少なくとも佐倉先生の抱く想いにも気がついてしまっていた。
そんなこともあり、私は微かに先生の大人としての余裕が癇に障ってしまったのかもしれない。
否、その動機はもっと深層なもの。きっと私は、それを先生に確かめたかった。
「先生は佐倉先生と――付き合っているの、ですか?」
口にしたその疑問は、真に私が確かめたいことではない。
私は去河くんや佐倉先生を利して、北村先生の内心を覗こうとしていたのだった。
私のその問いを受けて、北村先生は表情を俄かに変える。
北村先生は、やや掴み処がない人だ。常に飄々と脱力していて、無暗に狼狽えたりはしない。厳格とは言い難くとも、年齢以上の余裕を以って生徒に接している。そんな先生は思いの外、クラスの皆にも慕われているようだった。
そうした北村先生であるからこそ、この時の微かな揺らぎには意味があるように思える。しかし、それも一瞬。先生は大人の顔を纏うと、苦笑いを浮かべこう話す。
「ああ、騒ぎになったみたいだな。それを去河が、注意してくれたんだろ。全く、仕方ない奴らだ。面倒だが、後で説教でもしてやるさ」
「……」
その騒ぎの一端に自分が関係してることを、先生は触れようとはしない。たぶん、それを知りながら敢えてそうしていた。
最もわざわざ私などに向かって、それを言う必要もないということなのだろう。だからその点に於いて、無関係な私が先生を追求する理由はなかった。
それでも私は、去河くんの気持ちを知り。噂の真偽はともかくとしても、少なくとも佐倉先生の抱く想いにも気がついてしまっていた。
そんなこともあり、私は微かに先生の大人としての余裕が癇に障ってしまったのかもしれない。
否、その動機はもっと深層なもの。きっと私は、それを先生に確かめたかった。
「先生は佐倉先生と――付き合っているの、ですか?」
口にしたその疑問は、真に私が確かめたいことではない。
私は去河くんや佐倉先生を利して、北村先生の内心を覗こうとしていたのだった。