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クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
 私なりには、思い切って訊いたつもりだったけれど……。

「ハハハ――クラスの奴らが、そんな噂してるのは知っている。連中も年頃だから、その手の話題が好きなのもわかるよ。だから真面目に答えるのもどうかと思うが、それは事実じゃないぞ」

 北村先生はそう言って、それを一笑に伏す。

「そうでしたか。妙なことを訊いてしまって、すいません」

「別に、それは構わんが――しかし、やや意外だよ」

「……?」

「藍山が――そんな噂を気にするタイプだとは、思ってなかった」

 そんな風に言われた時。私の内面で、置き忘れたような感情がざわめいた。

「私、だって……」

「ん?」

 惚けたその顔を向けられ。私はついに――


「先生は――藍山楓を、憶えていますか?」


 秘め続けていた、その名を口にしている。

 その後に訪れた刹那の沈黙。それが何かを、物語るものなのか。やや沈痛な面持ちとなり、それでも北村先生は冷静に語った。


「もちろん、憶えている。担任ではなかったが、授業を受け持ったこともあるからな……。今まで話さなかったが、藍山の姉さんだってこともわかっていたよ」

「それじゃあ……卒業してからの、ことも?」

「ああ……耳にしていた」

「そう……ですか」

 その時――私はじっと北村先生を見つめていた。

 けれど先生は――言葉にした以外のことを、私に教えようとはしていない。
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