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クラス ×イト
第4章 けツらク 【藍山栞1】
 それは、一か月ほど前のこと。楓姉さんの部屋で本を探していた時に、私はその手帳を見つけている。

 それを開くのは、それ以来のことだった。

 手帳は主に予定などを記したものであり、日記のように心情を綴ったものではない。それでも端々に、印象的と思える言葉を書かれた部分があった。

 私は机に戻ると、楓姉さんの手帳からその想いの欠片を紐解く。

「201×年……三年前の三月十六日」

 私はスケジュール表に『卒業式』と書かれたマス目を目にしている。


『今日で卒業。もう私たちの間に、何も隔てるものはないはず』


 私はその言葉を留めながら、更に頁を捲った。

「同じ年の……六月十五日」

 それは、楓姉さんが自殺する三日前の日付。そこには――


『もう、私だって大人だよ。この想い届かせてみせる――必ず』


 そんな言葉が記されたマス目には、丸で囲まれた『K』の一文字が……。

「……」

 私はこの手帳から、何を感じればいいのだろう。

 否、既に――様々な考えは巡っている。

 だから私は今日――北村先生に姉の名をぶつけた。

 そして余計なことと知りながらも、去河くんに妙なことを言ったりして……。

 だけどこの手帳は、物語とは違う。短い言葉は私に、何一つ確かなものはくれなかった。

 言い様のなく揺れ始める、私の心――。

 それを止めようとして、私はそっと手帳を閉じる。


 楓姉さんの死を咀嚼できずに、さ迷う。

 目指す先もない私の歩みは、何処まで進んでも『途中』だった。
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