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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
「それよか、先生。逆に迷惑じゃなかった? 俺のせいで、また変なこと言われるかもしれねーし」

 少し様子が変わったのは、要二が改めてそう訊ねてからだった。

 佐倉先生は優しい笑顔のままだった、けど……。

「平気よ。それこそ、気にする必要なんてないわ。去河くんは、授業に不慣れな先生を庇ってくれただけなのでしょ」

「えっ……つーか、俺は……」

「ともかく――そんな生徒もいてくれるんだから、先生だってしっかりしなくちゃね。少し勇気を貰えた気がしてるの。そんな意味でも、去河くんには感謝してるんだ」

「……」

 先生の話を聞いて、要二は顔色を元に戻し俯いていた。

 そうなった理由は横で聞いていた僕でも、何となく理解できる。佐倉先生は要二の想いを、まるで相手にしようとはしていない。そんなことが、何となくわかった。

 それは先生という立場なら、当然の対応なのかもしれない。だけど要二の友達として、僕は複雑な気持ちだ。

 否、たぶん違う。友達だからというよりも、同じく誰かに片思いしてる者として。まるで自分の気持ちまで、無視されたような気が――してる。

 その場の勢いだった。ちゃんした言葉でもなかったのかもしれない。それでも要二は勇気を出して、自分の気持ちを伝えた筈なのに……。


「英太――お前、もう行けよ」

 要二にそう言われ――

「あ! そうだ。もう掃除の時間かぁ」

 僕は白々しく、そう答える。

 今、この場での僕は傍観者。これは要二と佐倉先生――二人の間の話。

 そんなことを察すると、僕は二人を残し保健室を後にしていた。
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