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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
 自分で言うのもどうかとは思うけど、このサイトに投稿している僕の小説は酷く退屈なものだった。

 一人の内気で冴えない高校生が、窓際の席でひっそりと本を読む女の子に恋をする。言ってしまえば、それだけの物語。

 それだけじゃストーリーが貧弱過ぎるから、少しはフィクショナルな場面も挿入してみるのだけど。基本的には、僕自身のリアルな片思いが軸になっていた。

 つまりは――僕が藍山さんに抱く想いを書いたもの。

 だけどそんな小説の続きを、楽しみにしてくれる人もいるんだ。その短いメッセージは、僕をとても励ましてくれている。

 一体、その人はどんな人なのかな? もしかしたら、僕みたいに誰かに片思いしてるのかもしれないな……。

 メッセージの相手を少し夢想しながら、僕はキーボードを叩き小説の続きを書き始めた。

 とても単純な物語であるから、その結末も意外なものにはなりようがない。すなわち主人公の恋の行方の顛末。それだけ。

 その恋が、破れるのか叶うのか――その二択しかなかった。

 当然だけど自分を色濃く投影する以上、書き始めた当初から後者ろなることを、僕は自然と念頭に置いていた。


「……」

 だけどそこに向かって、書き進めるのつれ。現実の自分とのギャップに、僕は違和感を覚えずにはいられなかった。

 物語の中では、主人公がヒロインに告白を果たす場面も近い。でもその後に訪れるハッピーエンドを、たぶん僕自身が信じようとはしていなかった。

 このままじゃ、何れはまた……。

 たぶん今のままじゃ、僕は望む結末を書けないような気がしている。

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