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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
※ ※
次の朝。学校に向かう途中で、少し前を歩くのは見慣れた後姿。制服がパツンとなっている丸っこい背中に駆け寄り、僕は声をかけた。
「要二、おはよう」
「おう……英太か」
と返事をした要二は、何処となく元気がない。
僕は「どうしたの?」と訊こうとして、その言葉を呑み込む。それは流石に無粋だと感じていたからだ。
僕がいなくなった後の保健室。そこで佐倉先生と話したことが、間違いなく関係してるのだろう。
「……」
そんなことを考え、僕が黙っていると――
「なんだよ。なんか、言いたそうな面しやがって」
その様子を察した、要二が言う。
佐倉先生とのことは訊きにくいと感じ、僕は咄嗟に別の話題を思い浮べる。でもそれも、気になっていたことの一つだ。
「あ、そうだ。僕が保健室に行く前に、藍山さんと何か話してたよね?」
「ああ、やっぱ気になるよな」
「別に……それ程でも、ないけどさ」
「あ、そう。じゃあ、教えてやらねーっと」
と、意地悪く笑う要二。ちょっと癪だけど、そこは素直に認めることにする。
「うん……気になる。だから、教えて」
「バーカ。最初から、そう言えって。藍山ってさ――意外とお節介らしいぞ」
「お節介?」
「教師を好きになるなんて、無駄だからやめとけってさ」
「藍山さんが要二に、そんなこと言ったの?」
「ああ」
そんな藍山さんを、僕はとても意外に感じていた。