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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
先導する三生に誘われるままに、僕ら二人は駅前のデパートに来ていた。距離的に学校から近いせいもあり、日頃から城平高校の生徒たちの姿も多い。この日も学校帰りの見慣れた制服姿が、至る処に見受けられた。
だけど地味な僕らからしてみれば、普段からあまり足の向く場所とは言い難かった。
三生は特に買い物をする風でもなくて。僕たちは幾つもの店舗が密集してるフードコートで飲み物だけを買うと、とりあえず端っこの席を選びそこに座った。
「ねえ――三生」
「なに、英太くん」
三生は呼びかけに答えてはいたけど、僕の顔をまるで見ようとはしない。その視線は一心に、だいぶ離れた場所に座る彼女の姿を捉えていた。
彼女の後を追っているのだとわかったのは、学校を出てすぐのこと。それに気がついていただけに、僕はとても落ち着かない気分だった。
「もう、行こうよ。見つかったら、不味いでしょ?」
僕は彼女の方をチラリと見て、小声で言う。
その席に一人で佇み、スマホを眺めている彼女とは――赤緒礼華のことだ。
例の放課後の出来事から、今日でまだ三日目。あの時、ふとしたことから赤緒さんと瀬山くんの話を聞いてしまった三生は、それを彼女から厳しく口止めされていた筈だ。
それがどんな話だったのか、僕は聞いてはいないけれど。こんな風に後をつけているのがバレたら、あの赤緒さんが只で済ますとは考えられない……。
僕はそう考えると、気が気じゃなかったんだ。