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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
「ねえ、聞いてる?」

 上の空で返事をしない三生。その肩を揺らして、僕は急かすように言った。

「あ、うん。ゴメン――なんだっけ?」

 ようやく僕に視線を戻して、三生の惚けたような言葉。

 でもここまで一緒にいた、僕にはわかっている。別に惚けてる訳じゃなくて、三生が夢中なんだってことを……。

 それを感じているだけに、尚更に僕は居心地が悪いのだろう。正直に言えば、少しだけ悪い予感さえしていた。

「どうして、赤緒さんの後をつけたりしてるのさ?」

 僕が改めてそう問うと、三生はデレッとした締まりのない笑みを浮かべながら、こう答えている。

「僕さ――赤緒さんのこと、好きになっちゃったみたい」

「は?」

 ある程度、そんなことかと予想はしてたけども。それでもまさかあの三生が、こんな風にはっきりと自分の気持ちを口にするとは考えてはいなかった。

 もちろん、友達の僕がそれを悪く言ったりしたくはない。だけど今の三生の気持ちが、僕や要二の場合と同じだとは考えにくかった。

 だってそうなると、そのきっかけは『アレ』――ということ、なんだよね? すなわち……もっと詳しく言うのなら……赤緒さんに、口で気持ち良くしてもらった『アノ行為』が原因な訳で……。

 それって、どうなのさ? 僕は些か困惑しながら、寺ながら顔を赤くする三生の様子を見つめていた。
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