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金木犀
第5章 傷ついた心
愛歩SIDE
それからのあたしの周りは、慌ただしかった。
お母さんはあたしの事情を知って泣き崩れ、
お父さんも泣いて謝ってくれた。
「何も出来なくてごめんな」
って。
お兄ちゃんはあたしの高校に行って
先生に事情を話し、あたしをレイプした
男の人達を特定してくれた。
…退学に、なったんだって。
何度も病院を訪れ、検査を繰り返した。
何度も中出しされたけど、
航がピルを飲ませてくれたから
妊娠はしていなくて、生理も来た。
だけど、あたしの心と体に大きな傷が残った。
ショックとストレスから声が出なくなり、
表情筋が殆ど動かなくなった。
男の人を見るとパニックになって暴れ出し、
密室だと出口を求めてさ迷い、
拘束されていたネクタイに対しても怖がった。
お兄ちゃんとお父さんは大丈夫だけど、
医者の男の人ですらパニックになって暴れ出し、
検査にとても苦労したらしい。
…死にたい。
もう死にたい…
こんな辛い思い、もうしたくない…
死んで楽になりたい…
…死ぬ前にもう一度、航に会いたい…
あの日以来一度も航を見ていない。
航。
会いたいよ…
だけど…怖い。
怖い…怖い怖い怖い怖い。