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金木犀
第6章 それぞれの思い
航SIDE
「悠介さん!!」
もう、殴られる寸前。
後ろから飛んできた結衣の声に、
愛歩の兄貴は拳を振り上げたまま振り返った。
「…っ、結衣ちゃん…」
…あ
俺の視線が、
「あゆ…み」
1人の女を捉えた。
目の前にいる愛歩の兄貴や、
愛歩の車椅子を押してる結衣は視界に入らず。
俺は、愛歩だけを見つめた。
大きく目を見開いた愛歩の目から、涙が溢れて。
約1年半ぶりに見る愛歩の姿に…
俺も、涙が溢れた。
そして…
「…、…る。わたる…っ」
「…!?」
「愛歩!?声…っ」
「わ…、…っ、航…っ!」
掠れた声で俺の名を呼び、車椅子から立ち上がり
駆け寄ってきて…
「航…!」
思いきり、抱きついてきた…
細い体を抱きとめ、しっかり胸に閉じ込める。
「あゆ、…っ、愛歩…っ」
久しぶりに抱いた、愛歩の体。
涙が止まらなくて、ぎゅっと抱き締めた。
「愛歩…っ」
この、温もりを。
愛しい愛しいこの子を。
「好きだよ…」
もう、手放したくない…