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金木犀
第6章 それぞれの思い
航SIDE
いつものように結衣と一緒に病院に来て、
向こうから歩いてくる愛歩の兄貴を見て
表情が硬くなった。
…今日も、殴られる。
その毎日だ。
愛歩の兄貴は俺らを見ると表情を険しくし、
俺を鋭く睨みつける。
…慣れた。
愛歩の兄貴から向けられる表情は、こればっかだ。
「…お前。ちょっと来い」
毎日同じ事の繰り返し。
…毎日同じように殴られてしまう俺も何なんだろう。
そんな感情がこみ上げた時。
「…っ、何で…何でですか!」
隣を歩いてた結衣が堪え切れないように叫んだ。
「何でっ…どうして罪のない航を傷付けるの!?
悠介さん…勘違いもいい加減にしてください!
航は愛歩を助けてくれたのにっ!」
「…結衣」
「その行動が愛歩を傷付けてるって
分からないんですか!?愛歩が頼んだ事ですか!?
愛歩が航を殴れって言ったんですか?違うでしょ!?
悠介さんは愛歩の事何も分かってない…
一番愛歩を傷付けてるのはあなたじゃない!」
「…結衣!」
周りの目も憚らず叫ぶ結衣の目には涙が光っていた。
そんな結衣に、愛歩の兄貴は何を言う事もせず。
俺の腕を掴み、歩き出した。