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金木犀
第5章 傷ついた心
お兄ちゃんに伝えると、物凄く怒られてしまった。
「結衣ちゃんからも聞いた…
何で傷付けられた男に会いたいなんて思うんだよ!?」
違う。
違うよ、お兄ちゃん。
「俺がこんなにっ…、…っ、
…絶対あんな男に会わせねぇからな」
どうして。
どうして、お兄ちゃん。
伝えたいのに、言葉が出ない。
スケッチブックに言葉を書くのに、間に合わない。
「…会わせねぇから」
…何で、どうして。
そんな傷付いた顔するの。
悲痛な表情で病室を出て行ったお兄ちゃん。
…航。
ねぇ、航…
会いたい…
そして。
「そういう事ならお安い御用だよ!」
ほんと?
その意思を言葉にしたスケッチブックを
結衣に見せると、快く承諾してくれた。
『航今、どうしてる?』
そう書くと、結衣の表情が少し曇った。
それから暫く沈黙が続いて。
不安になった。
まさか…航に何かあったの?
「あのね、愛歩…航、空っぽになってる。
抜け殻みたいになっちゃってるの」
空っぽ…?
「これ…言うべきなのかどうか分からないけど」
そこから聞いた話は、あたしを驚かせるものだった。