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金木犀
第6章 それぞれの思い





愛歩SIDE


早く


早く、


早く、早く、


航に会いたい。


結衣が、あたしの車椅子を押してくれて。


必死で辺りを見渡して、
航とお兄ちゃんを探した。


泣き腫らして腫れた顔が痛い。


こんなに泣いたのは久しぶりで、
それだけ航に早く会いたかった。


航。


あなたはあの時以来1度も、
あたしの所に来てくれた事がなかった。


…来れなかったんだね。


毎日毎日来てくれようとして、
お兄ちゃんに止められちゃってたんだ。


そして航は、お兄ちゃんに…


「っ、あれは!?」


結衣の声に、指さす方を見つめると。


「…っ!」


航がお兄ちゃんに殴られそうになっていて…


「悠介さん!!」


あたしの声は、声にならず空気に消えたけど。


結衣の声が、一触即発な2人に向けて飛んだ。


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