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金木犀
第6章 それぞれの思い
「分からないでしょうね…分からないから
人を簡単に傷付けられる。
結衣の言う通り…愛歩を一番傷付けてるのは
あなたじゃないですか!」
「…黙れ」
「あなたのやってる事は愛歩の為なんかじゃない…
自分を守る為のエゴにしかすぎない!!」
「…うるさい黙れっ!!」
思いきり殴られそうになったのを寸前で避け、
愛歩の兄貴の胸ぐらを掴んで壁に押し付ける。
「っ…」
殴ろうとして躊躇して、振り上げた拳が震える。
歯を食いしばってる愛歩の兄貴。
その時愛歩の笑顔が思い浮かび、
俺の愛歩の兄貴の胸ぐらを掴む力が緩んだ。
悔しい…悔しい。
今ここでこの人を殴ったら。
殴ったら、俺は…
心が痛くて、息がしづらい。
もう…
こんな、辛い思いをする位なら。
もう、死んでしまいたい…
床に力なく座り込み、溢れる涙を流した。
愛歩。
愛歩。
会いたい…
すると突然腕を凄い力で引き上げられ、
愛歩の兄貴が大きく拳を振りかぶってるのが見えて。
「っ…」
…もう。
もう、いい…
抵抗もせず目を閉じた…その時だった。