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はじめてをきみに
第1章 きみの名前を呼ぶ





狭いシングルベッドに、ふたり、押しくらまんじゅうで横になる。


果ててすぐ、気を失うように眠った先輩の裸の肩を抱き寄せ、頭を撫でる。と、閉じていた瞼がそっと開いた。


オレンジの光が、俺を見つめる。


「すいません、起こしちゃいました?」

「ううん、起きてたの。目を閉じてただけ」

「ほんとう?」

「ほんとう」


先輩がほんのり笑って、俺の胸に顔を埋める。


強く抱きしめたら折れそうな先輩の体を、優しく包む。


先輩は、吐息と寝息が混ざったような、穏やかな息を吐き、つぶやくように言った。


「翔太、私、いま幸せだよ」

「俺もです」

「……でもね、ちょっと怖いの。始まったものは、いつか終わるでしょう。翔太と私との関係も始まってしまったんだから、いつか終わるんじゃないかと思って」

「俺たちが終わるのは、先輩が終わらせたいと思ったときだけです」

「それならきっと、私たちが死ぬまでは終わらないね」


先輩が、当たり前のようにそう言ったことがうれしくて、涙が出た。


それが、たとえば今だけでもいいんだ。できれば、ずっとがいいけど。


でも、俺は先輩が好きで、先輩は俺が好きで、そういう奇跡みたいな瞬間が、今ここで起こっている。それだけで、俺はうれしい。


涙を見られたくなくて顔をなんとか隠そうとしたけど、その必要はなかった。


今度こそ、先輩は眠っていた。


その柔い髪にキスをして、目を閉じる。


眠りに落ちていく意識の中で、俺は神様に似た何かに祈った。




明日も、1年後も、できれば死ぬまで。

彼女の名前を、呼べますように。








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