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はじめてをきみに
第2章 据え膳が前のめり

いつもは物足りないと感じる、この穏やかなキスが、今日は驚くほど気持ちよかった。
あたしは、時折唇の隙間から漏れる遼平のつやっぽい吐息を感じながら、求めてくる彼にどこまでも応える。
……気持ちいい。
あまりの心地よさに、思わず両手を伸ばして遼平の顔を引き寄せた。
彼はそれに応じるように、あたしの下唇をちゅう、と吸ったあと、頬に添えたあたしの右手を取り、指を絡ませる。
「……遼平、好きだね」
「え?」
「はむはむするキス」
唇が触れる距離で。
息継ぎの合間に何気なくそう言ったら、彼は照れたようにふと目を伏せてつぶやいた。
「……好き。亜衣の唇、やわらかくて気持ちいい」
「…………っ」
真っ赤な顔。震える睫毛。あたしを見つめる、熱っぽい瞳。そしてその言葉尻の、照れの内側に見え隠れした、遼平の強い欲情。
その破壊力たるや、圧倒的だった。ぎゅん、と胸が締めつけられて、息が苦しい。
それと同時に、じわじわと体の芯がうずきはじめたのも、あたしは感じていた。
前言撤回。やっぱり物足りない。ぜんぜん遼平が足りない。
――もっともっと、遼平が欲しい。

