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真実アイロニー【完結】
第10章 衝動的。
「琥珀君以外、本当に小早川に必要ないんだな」
微かに笑みが漏れた。
どうしてか。
俺は彼に嫉妬しているみたいだ。
彼女は琥珀君が全てで、彼だけを求めている。
そんな唯一無二の存在と対抗するなんて出来ない。
彼はもうこの世にはいない。
だからこそ、小早川の中で大きくなったんだ。
嫉妬するだなんて、どうかしてる。
だって、俺は小早川とどうにかなりたいわけじゃない。
わかってた筈なのに。
「琥珀ね。飛び降りる間際に言ってくれたんだ。
これで一生、一緒だねって」
その約束はなんて残酷なのだろう。
生きてしまった彼女は。
それにしがみついて、縛られて、離れられなくなってるのに。
きっと、彼はそんなつもりで言ったわけじゃないのに。
もっと。
温かな、そう桜が咲く季節の様に。
優しくて、少し切ない。そんな気持ちで言った筈なのに。