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真実アイロニー【完結】
第3章 黒く塗り潰してしまったのは。
まあ、追々の課題って事にしよう。
……そういや、どうしてスリッパ履いてたんだ?
忘れただけか?
ガランとした職員室で、俺は一人授業構成について考えていた。
だけど、その合間に浮かぶのは小早川さんの事。
頬杖をついて、俺は名簿にある小早川さんの名前を目でなぞる。
赤い、ピアス…か。
どうして、外そうとしないのだろう。
「あれ?残ってたんですか。早乙女先生」
ガラガラと音を立てながら、職員室に入って来たのは宇津木先生だ。
手にはスコア。宇津木先生は吹奏楽の顧問らしい。
振り返ると、俺は笑顔を見せて答えた。
「はい、授業の構成についてもう少し考えたくて」
「真面目ですね。早乙女先生は」
「そんな事ないですよ」
ははって軽く笑う。
宇津木先生は自分の席にスコアを置いて、椅子に腰かけるとメガネをくいっと上げる。
今、チャンスじゃないか?
宇津木先生と二人きり。
小早川の事を聞くのなら、今だと思った。
「あの」
机に向かう宇津木先生に、おずおずと声をかける。
俺の言葉に、宇津木先生は俯かせた顔を上げて首を傾げた。