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真実アイロニー【完結】
第3章 黒く塗り潰してしまったのは。
一歩、一歩。
確かに、ゆっくりと君に近付いてく。
そんな俺に気付いた君が、桜からゆっくりと俺に視線を向けた。
無表情で、何も映していない、その瞳。
「小早川さん、おはよう」
視線が絡んだと同時に、俺はそう口を開いた。
だけど、俺の顔を見るなり小早川さんは視線を伏せるとまた桜を見上げる。
「早いね、いつもこんな早く来てるの?」
返事を待たずに、いや、きっと無視をされたのだろう。
だけど、懲りずに声をかける。
「……」
「桜、好きなの?」
じっと黙って、桜を見つめているから好きなのかと思い、そう尋ねる。
だけど、小早川さんは静かに俺に視線を向けると一言。
「……キライ」
そう、告げた。