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真実アイロニー【完結】
第5章 薄く色付いて行く。
「……先生。
どうして死ねって簡単に言ったり、言わせたりするんだろうね」
「言わせたり?」
「…ああ、これ」
そう言うと、やっと俺を見た彼女は手招きする。
素直に近くに行くと、彼女の手の中にある携帯を俺に見せた。
その液晶に映し出されているのは、どうやら小説らしい。
文字の羅列を目で追いながら、ぼそっと言った。
「小説読むんだ」
「読んでちゃおかしい?先生」
「いや、そんな事はないけど。小説を読むのはいい事だ。
それで?言わせるって何?」
「これ」
画面をゆっくりとスクロールさせると、ある会話文が目に入る。
“死ね”そうやって、登場人物、多分ヒーローにあたる男の子だろう。
その子が主人公に向かって、冷たく言い放っていた。
「……えっと、この男の子は主人公が嫌いとか?」
そう、素直に感じた事を尋ねてみると、彼女はクスクスと笑った。
目を細めて、それはそれは楽しそうに。