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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
彼は沈黙してしまい、私の方がまた戸惑ってしまう。
森本との事は、『サスペンスのドラマ等で、ヒロインが何らかの弱味を握られて身体の関係を迫られて……』
という展開にそっくりだ、と、唐突に今日思ったのだ。
ドラマのパターンに当て嵌めて、この先どうなるのか、と考えると――
脅す男――森本がもっとエスカレートしていくのでは?……と思っていたので、何だか拍子抜けしたようなおかしな気分だった。
(でも……ドラマの世界なら、窮地を救う刑事なり探偵が居るけど、現実はそういう風にならないわよね……)
私は思わず溜め息を吐いて、脈絡のない出来事を思い出していた。
――リビングでそういうドラマを観る時は大抵私と悟志しか居なかった。
祐樹は夜寝るのが早いし、剛はそういう血生臭いサスペンスは好きでないらしく、一緒になって観る事はなかった。
まあ、こういう手のドラマには殺人シーンやら、ベッドシーンがあったりするから、子供たちに見せるのもどうか、とも思う。
悟志は、暴力シーンに怯えて身を縮めたり、ベッドシーンで赤くなる私をからかった。