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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
ヒロインが脅されて、拒みながらも男の手の中に堕ちていくのを見ながら、悟志は冗談半分で私にこう言った。
『菊野も気を付けるんだよ?
君はそそっかしい上に無防備だから……
強く言われたら、相手の言うことを聞いてしまいそうだ』
『う……そ、そんな事……ない……多分』
『まあ、僕が君を守るから大丈夫だけどね?
……ああ、菊野を残して死ねないなあ……
僕の方が早くにおじいちゃんになる年齢なのに……
よしっ頑張って百まで生きるぞ!』
(――悟志さん……)
おどけた笑顔の彼を思い出して、不意に涙が滲み鼻の奥がつん、と痛んだ。