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愛しては、ならない
第41章 更に抉られる、傷痕②
『この家に来なければ良かったんだよ!』
祐樹の鋭い声が耳の奥で蘇り、バクン、と心臓が大きく脈打った。
まずい。また発作を起こしてしまう。
俺は天井を仰ぎ深呼吸しながらモーツアルトのソナタを口ずさみ、気を紛らわせる。
頭の中に現れる五線紙と音符を追い、無心にメロデイーを歌って忘れようとした。
完全に頭の中から追い出す事は出来なくても、これで発作だけは防げるようになってきた。
幼い頃にも両親のおぞましい行為を見た時に、ピアノの音の世界に逃げ込み自分を守っていたが、それと同じような儀式だ。
まさか、ここに来てそれをまたやる事になるとは思わなかったが。