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愛しては、ならない
第41章 更に抉られる、傷痕②
鼓動が緩やかになり手の汗も引いてきて、ホッ息をつくと、ポケットの中のスマホが振動した。
「清崎からか……」
僅かに頬が緩んだ。
彼女に何も連絡しないままでいるので、きっと心配しているだろう。
返事くらい打ってやらないと、可哀想かも知れないな――
『他の人を好きでもいいの……』
『苦しいなら、私を抱いて』
彼女の甘い声と、柔らかい唇、髪の香りを思い出して、胸が痛く、そして安らぎに似た感情をおぼえた。
思わず、彼女に甘えてしまいたくなる。
だが駄目だ。心の中に菊野が居るのに、少し思うように行かなくて苦しいからといって清崎に寄り掛かるなど、卑怯な気がする。