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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……



身体中が鉛のように重い。

泣き過ぎたせいで目は赤いままで、瞼も少し腫れぼったい。

指先を動かすのさえ億劫に感じるが、私は彼の元へと向かう。

訪れるのが二度目の、森本のマンションのエレベーターの中の、鏡に映る自分から思わず顔を逸らす。



――私は一体何をしているのだろう。

本当は、今すぐにでも剛の元へと飛んで行きたい。

彼を力一杯抱き締めて、謝りたい。

そして心から『愛している』と言ってあげたい。



だが、それは許されない事だ。

それに、今となってはもう遅いのだろう。

彼は昨夜、パニックを起こして倒れたらしい。

原因は分からないが、どうやら小さな頃の記憶が蘇って悪夢を見ているのではないか、と花野が言った。

悟志の病室に花野が訪れて、私に昨夜の出来事を聞かせたのだ。


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