この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……
身体中が鉛のように重い。
泣き過ぎたせいで目は赤いままで、瞼も少し腫れぼったい。
指先を動かすのさえ億劫に感じるが、私は彼の元へと向かう。
訪れるのが二度目の、森本のマンションのエレベーターの中の、鏡に映る自分から思わず顔を逸らす。
――私は一体何をしているのだろう。
本当は、今すぐにでも剛の元へと飛んで行きたい。
彼を力一杯抱き締めて、謝りたい。
そして心から『愛している』と言ってあげたい。
だが、それは許されない事だ。
それに、今となってはもう遅いのだろう。
彼は昨夜、パニックを起こして倒れたらしい。
原因は分からないが、どうやら小さな頃の記憶が蘇って悪夢を見ているのではないか、と花野が言った。
悟志の病室に花野が訪れて、私に昨夜の出来事を聞かせたのだ。