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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……
花野は私から目を離さない。
私は震える指でスカートをぎゅっと握り締めた。
『貴女たちは、平穏に、仲良く上手くいっていたじゃないの……
悟志さんも真面目に働いて、貴女の事も祐樹も大事にして……
それでも、貴女は足りなかったの?』
『……』
私は、何かを言い掛けて言葉を呑み込む。
そうだ、私は傲慢だったのだ。
自分が平穏に、無事に暮らせていたのは、悟志や父、母が守ってくれていたからなのだ。
それなのに、私はその事を全く分かっていなかった。
剛を、幸せに、笑顔にしたいと思って彼を引き取ったけれど、私は彼を不幸に突き落としただけではないのか?
何もわかっていない愚かな私が、人を幸せにするなど、無理な事だったのかも知れない。
『まあ……今そんな事を言ってもそれこそはじまらないわ。
一度養子縁組をしたら、離縁は出来ない決まりだし、途中で放り出すだなんてもっての他ですからね……
ちゃんと……彼が大人になるまで責任を持って見てあげないと』
花野は帰り支度をしながら私に背を向けて言う。