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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……


家の玄関で襲われた時も、この間のマンションでの事も勿論怖かったし、触れられるのが嫌だった。

でも、彼の中にある複雑な感情を見てしまった今は――

彼は、抱き締める力を少し弱め、頬に触れて来た。

私はまだ泣き止めずにいたが、彼が指で涙を拭って苦笑した。



「ああ……旦那さんや剛は菊野さんの事が本当に心配なんだろうね……」

「う……どういう意味……」

「可愛くて仕方がないから、心配になるんじゃないのかな?
僕がもし菊野さんの旦那とか息子だったら……心配を通り越して閉じ込めたくなるかも」

「ええっ」

「な――んちゃって」


舌を出してチャーミングに笑う彼を、憎めなくなっている自分に私は気付く。


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