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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……
大きな溜め息が頭上で聞こえて、背中が暖かくなる。
彼は泣く私を抱き締めて、頭をポンポンと叩き、呆れた声を出した。
「……もう……だから菊野さんは危なっかしいんです」
「う……うう……らっれ……」
「こう言う手の昔話をしておいて、同情をひいて身体を狙ってるだけかも知れませんよ?」
「うっ……そ、れは……困るから……っ」
「な――んて……
やっぱり、菊野さんは何処か似てる」
「……?」
森本は、初めて愛した人の事を思い出し、ほんの一瞬彼女と菊野を重ねて見た。
だが彼女の面影は直ぐに消え去り、彼がそれを認めると同時に、ある想いを確信する。
「森本くん……あ、あの……」
――そう言えば、彼が言った『取引』はどうなっているのだろうか?
私が言いにくそうに切り出すと、彼の瞳が揺れた。
「なあに?……気になる事でも?
まあ、そうだよね、気になる事ばっかりだよね……
俺、あの写真を餌に菊野さんをデートに連れ出したかっただけなんだ。少なくとも今日はね……
菊野さん、俺が……怖い?」
「――」
彼の儚げな瞳の色に、私は言葉を失う。