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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……


彼が私を見詰める目が一瞬強く輝いたが、何処からか青い風船がゆらゆらと飛んできて、二人の背中側にある木の枝に引っ掛かる。

私も彼も何となく風船の動きを目で追っていたら、小さな女の子が泣きながら走ってやって来て、風船を指差した。

彼は女の子に笑いかけて、小さく頷くと腕捲りをして、足踏みをしてから高くジャンプして風船の紐を掴んだ。



「はい……大事な物は手から離しちゃダメだよ」



泣きべそをかいていた女の子は、彼が風船を渡した途端に溢れんばかりの笑顔になり、何度も彼に手を振りながら母親の元へと走っていった。

彼は暫く女の子の姿を目で追っていたが、ふと小さく呟いた。



「風船ひとつであんなに嬉しそうな顔が出来るなんて、いいね」

「森本くん……?」

「菊野さん」


彼は振り向き、私の手を取った。

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