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愛しては、ならない
第43章 こわれる
「な……なんでも……」
「ふうん?」
彼は、毛布を畳むと脇に抱えて片方の手で私の手を握り、立たせてくれる。
私の事を上から下まで見詰め、ニコっと笑って歩き出した。
「菊野さんて、以外と感度がいいんですね」
大きな声で言われ、私は思わず彼の頭を叩いた。
「――も、もうっ……こんな所で変な事を言わないで!」
「うわ――お。菊野さんの愛の鞭だあ」
「ち、違うから!」
彼はコロコロ笑い、私も吊られて頬が緩む。
「……やっと笑顔に出来た」
「――え」
「菊野さんを……沢山怖がらせたし、泣かせたから……
僕が菊野さんを笑わせたかった」
彼の瞳は静かな湖のように凪いでいて、邪心など欠片も窺えない。
15歳の少年に似つかわしくない超然とした態度や、深い悲しみが時おり沈む瞳、かと思えば年齢よりも幼く見える事もある彼は、一体今までどんな15年を送ってきたのだろう。
少年らしくない、というなら、剛も同じだ。
沢山傷付いて、見たくない物を見て、愛を知らずに育ってきて――
そして、私にまた深く傷付けられて……
胸が押し潰される痛みをおぼえ、唇を噛むと森本が隣で心配そうに私を見ていた。